不動産投資で物件を比較するとき、最初に目に入るのが「利回り」の数字です。しかし、この数字には落とし穴があります。広告に掲載されている利回りと、実際に手元に残る利回りには大きな差があるからです。
利回りの仕組みを正しく理解しないまま物件を購入すると、「思ったほど儲からない」という結果を招きかねません。表面利回りと実質利回りの違いを把握することが、失敗しない投資判断の第一歩です。
この記事では、利回りの種類と計算方法から、エリア別の相場、判断時の注意点まで、初心者にもわかりやすく整理しています。
利回りの種類と計算方法
表面利回り(グロス利回り)
不動産広告に載っている利回りのほとんどがこの数字です。計算式は非常にシンプルです。
表面利回り = 年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100
たとえば月家賃7万円(年間84万円)、物件価格2,000万円なら表面利回りは4.2%です。ただしこの数字には経費がまったく含まれていません。
実質利回り(ネット利回り)
経費と購入時の諸費用を差し引いた「真の利回り」です。投資判断は必ずこちらで行いましょう。
実質利回り = (年間家賃収入 – 年間経費) ÷ (物件価格 + 購入時諸費用) × 100
| 項目 | 表面利回り | 実質利回り |
|---|---|---|
| 経費 | 考慮しない | 考慮する |
| 購入諸費用 | 含まない | 含む |
| 空室率 | 考慮しない | 考慮する場合あり |
| 用途 | 初期スクリーニング | 投資判断 |
表面利回りと実質利回りには通常1〜2%程度の差があります。表面5%の物件が実質3%台になることは珍しくありません。

エリア別・物件別の利回り相場
都心ワンルーム(東京23区)
- 新築:表面3.5〜4.5%、実質2〜3%
- 中古(築10〜20年):表面4.5〜6%、実質3〜4.5%
- 中古(築20年超):表面5〜8%、実質3.5〜6%
地方都市ワンルーム
- 政令指定都市:表面5〜8%、実質3.5〜6%
- 地方中小都市:表面8〜15%、実質5〜10%
一棟アパート
- 都市部:表面6〜9%、実質4〜7%
- 地方:表面10〜20%、実質7〜15%
地方の高利回り物件は魅力的に見えますが、空室リスクが高い点を忘れないでください。利回りが高い=リスクも高いという原則は常に念頭に置きましょう。不動産投資のメリット・デメリットは以下の記事で本音で解説しています。

利回り判断の3つの注意点
注意点1:高利回りには理由がある
表面利回り10%以上の物件は「なぜこんなに高いのか?」を疑いましょう。空室率が高い、立地が悪い、建物の状態が悪いなど、必ず理由があります。
注意点2:想定利回りを鵜呑みにしない
空室状態の物件に「この家賃で貸せたら」という仮定で算出された「想定利回り」は、実現できるとは限りません。必ず周辺の家賃相場を自分で調べましょう。
注意点3:利回りだけで判断しない
立地、築年数、管理状態、将来性も含めて総合判断が必要です。利回り3%台の都心優良物件が、利回り10%の地方築古物件より安全なケースもあります。不動産投資の失敗パターンを知りたい方は以下の記事も参考にしてください。



キャッシュフロー利回りで最終判断する
投資判断で最も重視すべきは「キャッシュフロー利回り」です。ローン返済を含めた手残り額で計算します。
キャッシュフロー利回り = 年間キャッシュフロー ÷ 自己資金 × 100
自己資金500万円で年間キャッシュフロー30万円なら6%。銀行預金と比較すれば十分に魅力的な水準です。物件選びのポイントは以下の記事で詳しくまとめています。





よくある質問(Q&A)
Q. 初心者が狙うべき利回りの目安は?
A. 都心の中古ワンルームなら表面4.5〜6%、実質3〜4.5%が現実的です。これより極端に高い物件はリスクが隠れている可能性があります。
Q. 利回り計算で空室率はどう織り込みますか?
A. 年間家賃収入に稼働率(90〜95%)を掛けて計算します。満室想定ではなく、空室を見込んだ保守的な計算をしましょう。
Q. 利回りが低い物件は買う価値がありませんか?
A. そうとは限りません。都心好立地で空室リスクが極めて低い物件は、利回りが低くても資産価値の維持・売却時のキャピタルゲインが期待できます。
実質利回りを下げる経費の内訳
表面利回りと実質利回りの差を生むのは、運用にかかる各種の経費です。どんな費用がかかるのかを具体的に把握しておくと、実質利回りの計算精度が上がります。
- 管理委託費:家賃の3〜5%が相場。入居者対応や集金を管理会社に任せる費用です。
- 管理費・修繕積立金:区分マンションの場合、毎月固定でかかります。
- 固定資産税・都市計画税:毎年課税される保有コストです。
- 修繕費・原状回復費:退去のたびのクリーニングや、設備の交換費用です。
- 火災保険・地震保険料:万一に備える保険のコストです。
- 入居者募集の広告料:空室を埋める際に仲介会社へ支払う費用です。
これらの経費は家賃収入の20〜30%程度になることが多いため、表面利回りから経費分を差し引いて考える必要があります。空室が発生すればその月の家賃はゼロになる一方、管理費や税金は変わらず出ていく点にも注意しましょう。
ローンを使うなら「イールドギャップ」も見る
融資を使って物件を購入する場合は、利回りと借入金利の差である「イールドギャップ」という考え方が役立ちます。これは実質利回りから借入金利を引いた数値で、この差が大きいほど手元に残るお金が多くなりやすい、という目安です。
たとえば実質利回り5%の物件を金利2%で借りて購入した場合、イールドギャップは3%です。逆に利回りが低いのに高い金利で借りてしまうと、差が縮まり、返済後の手残りがほとんど残らないこともあります。金利は借入先や個人の属性によって変わるため、複数の金融機関で条件を比べることが大切です。


新築と中古で利回りに差が出る理由
同じエリアでも、新築より中古の方が表面利回りが高く出やすい傾向があります。これは新築価格に販売会社の利益や広告費が上乗せされているためで、購入直後に資産価値が下がりやすいという側面があります。
一方で中古は価格が落ち着いており、購入価格に対する家賃の割合が高くなりやすいのが特徴です。ただし築年数が古いほど修繕費がかさみやすく、金融機関の融資期間が短くなる傾向もあるため、利回りの高さだけで判断するのは避けましょう。利回りの数字とあわせて、築年数・修繕履歴・立地をセットで見ることが大切です。
Q. 利回りは高ければ高いほど良いのですか?
A. 一概にそうとは言えません。極端に高い利回りの物件は、空室が続いている、立地に難がある、築年数が古く修繕費がかさむなど、価格が安い理由が隠れていることがあります。数字の高さより、その利回りが安定して続くかどうかを見極めましょう。
Q. 想定利回りと現況利回りはどう違いますか?
A. 現況利回りは実際に入居者がいて家賃が発生している状態の利回りで、想定利回りは空室を「この家賃で貸せたら」という仮定で計算した数字です。想定利回りは実現するとは限らないため、必ず周辺の家賃相場を自分で調べて裏付けを取りましょう。
Q. 利回りのほかに確認すべき指標はありますか?
A. 自己資金に対してどれだけ手元にお金が残るかを示すキャッシュフロー利回りが重要です。加えて、ローン残債と物件の売却見込み額の差である「残債と資産価値のバランス」も、出口を考えるうえで確認しておきたいポイントです。
利回りシミュレーションの手順
気になる物件が見つかったら、実際に自分で数字を組み立ててみましょう。次の手順で計算すると、広告の利回りに惑わされずに判断できます。
- 手順1:想定家賃に稼働率(90〜95%)を掛けて、現実的な年間家賃収入を出す。
- 手順2:管理費・修繕費・税金・保険料など、年間の経費を合算する。
- 手順3:物件価格に購入諸費用を加えた総投資額を求める。
- 手順4:(年間家賃収入−経費)÷総投資額で実質利回りを算出する。
- 手順5:ローン返済額を引いた手残りで、キャッシュフローを確認する。
満室想定ではなく、空室を見込んだ保守的な数字で計算することが、購入後のギャップを防ぐコツです。周辺の家賃相場は不動産ポータルサイトで実際の募集家賃を調べると、精度の高い前提が立てられます。
Q. 利回りが同じなら価格が安い物件を選ぶべき?
価格が安いほど総投資額が小さく、空室時のダメージも抑えやすくなります。ただし安い理由が立地や建物の状態にある場合もあるため、価格の背景まで確認したうえで判断しましょう。
Q. 地方の高利回り物件は避けるべきですか?
避けるべきとは限りませんが、高い利回りには相応の理由があることを前提に検討しましょう。地方物件は表面利回りが高く見えても、人口減少による空室リスクや、売却時に買い手が付きにくいといった側面があります。周辺の賃貸需要や人口動態を自分の目で確かめ、空室を見込んだ実質利回りで採算が取れるかを確認したうえで判断することが大切です。数字の高さだけで飛びつかない姿勢が、失敗を避ける鍵になります。
まとめ
利回りは不動産投資の重要指標ですが、表面利回りだけで判断すると実態を見誤ります。必ず経費を差し引いた実質利回りを計算し、さらにローン返済後のキャッシュフローまで確認してから投資判断をしましょう。
物件の相場価格は国土交通省の不動産情報ライブラリで確認できます。賃料相場はLIFULL HOME’Sで調べられます。

