物件を購入して数か月が過ぎたころ、都道府県から届く一通の納税通知書に驚いた経験はないでしょうか。それが不動産取得税です。購入時の諸費用の計算に入れ忘れていると、忘れたころにまとまった金額を請求されることになります。
不動産取得税は、軽減措置を使えるかどうかで金額が大きく変わる税金です。とくに賃貸用の物件は、新築か中古かによって扱いが分かれます。この記事では、計算の仕組み、適用できる軽減措置、そして申告手続きまでを順に整理します。

不動産取得税とはどんな税金か
取得したときに一度だけかかる地方税
不動産取得税は、土地や建物を取得したときに都道府県が課す地方税です。売買だけでなく、新築、増改築、贈与、交換によって取得した場合にもかかります。有償か無償かは問われず、登記をしたかどうかにも関係なく課税されるのが原則です。
一方で、相続によって取得した場合は課税されません。毎年かかる固定資産税とは違い、取得のタイミングで一度だけ課される税金である点が特徴です。
納税通知書が届くまでのタイムラグ
納税通知書は取得の直後には届きません。物件の評価や事務処理が終わってから送られてくるため、取得からおおむね数か月から半年程度後になることが一般的です。この時間差が「忘れたころに来る」と言われる理由です。
不動産取得税は購入時の諸費用として計上しておくべき支出です。手元資金の計画から抜け落ちていると、納付のタイミングで資金繰りが苦しくなります。
取得時の税金を含めた諸費用の考え方は、不動産の税金を扱った本で一度押さえておくと、資金計画に落とし込みやすくなります。
基本の計算式
課税標準×税率
不動産取得税は次の式で計算します。
不動産取得税 = 課税標準額(固定資産税評価額)× 税率
ここで使う課税標準額は、実際の売買価格ではありません。固定資産課税台帳に登録されている固定資産税評価額を用います。一般に、土地は公示価格の7割程度、建物は建築費の5〜6割程度が評価額の目安とされます。売買価格をそのまま掛けて計算すると、実際より大幅に高い金額が出てしまうので注意してください。
税率
| 区分 | 本則税率 | 特例税率 |
|---|---|---|
| 土地 | 4% | 3% |
| 住宅(建物) | 4% | 3% |
| 住宅以外の建物(店舗・事務所など) | 4% | 4% |
土地と住宅については税率が3%に引き下げられる特例があります。この特例には適用期限が設けられており、令和9年(2027年)3月31日までの取得が対象とされています。期限は延長されることもあるため、取得時点での最新の扱いは各都道府県の税務窓口で確認してください。
宅地の課税標準は2分の1になる
宅地および宅地評価された土地については、課税標準額が固定資産税評価額の2分の1になる特例があります。こちらも同じく令和9年(2027年)3月31日までの取得が対象とされている措置です。土地の税額計算では、この2分の1を忘れると倍の金額が出てしまいます。

建物の軽減措置
新築住宅は1戸あたり1,200万円の控除
一定の要件を満たす新築住宅は、建物の固定資産税評価額から1,200万円が控除されます。認定長期優良住宅の場合は控除額が1,300万円になります。
- 床面積が50㎡以上240㎡以下(1戸あたり)
- 貸家として建てる共同住宅・アパートの場合は40㎡以上240㎡以下
- 居住用であること(賃貸用でも可)
ここが賃貸経営にとって大きなポイントです。新築のアパートは、自分が住まなくても1戸ごとに控除が適用されます。10戸のアパートであれば、要件を満たす限り各戸に控除が及ぶため、建物にかかる不動産取得税がゼロになるケースも珍しくありません。
中古住宅は自己居住用が要件
中古住宅にも控除の制度がありますが、こちらは取得者が自分の居住用として使うことが要件とされています。そのため、投資目的で取得した中古の区分マンションや戸建てには、建物に対するこの控除は適用されません。
中古の投資用物件を検討している方は、建物部分の不動産取得税が満額かかる前提で資金計画を組んでおく必要があります。「中古でも軽減されるはず」と思い込んでいると、通知書を見て慌てることになります。
控除額の計算
控除が適用される場合、建物の税額は次のように計算します。
(建物の固定資産税評価額 − 控除額)× 3%
評価額が控除額を下回る場合は、課税されません。
土地の軽減措置
住宅用土地は税額から控除できる
住宅用の土地については、税額から一定額を差し引く軽減があります。差し引ける金額は、次の2つのうち大きい方です。
- 45,000円
- (土地1㎡あたりの固定資産税評価額 × 1/2)×(住宅の床面積 × 2、200㎡が上限)× 3%
2つ目の式は複雑に見えますが、要は住宅の床面積に応じた分だけ土地の税額を減らす仕組みです。床面積が広いほど控除額が大きくなり、上限は200㎡分までとなっています。
適用には建物側の要件を満たす必要がある
土地の軽減を受けるには、その土地の上に建つ住宅が特例の要件を満たしていること、そして土地と住宅の取得時期が一定の期間内に収まっていることが求められます。土地を先に買って後から建てる場合、期間の制限があるため、スケジュールには注意が必要です。
計算してみる
新築アパートを取得したケース
土地の固定資産税評価額が2,000万円、新築アパート(各戸50㎡・6戸)の建物評価額が3,000万円と仮定します。
| 項目 | 計算 | 税額 |
|---|---|---|
| 土地 | 2,000万円 × 1/2 × 3% − 控除 | 控除により大きく圧縮 |
| 建物 | (3,000万円 − 1,200万円×6戸)× 3% | 0円 |
建物は各戸に1,200万円の控除が及ぶため、評価額を上回る控除となり課税されません。土地についても住宅用地の軽減が働きます。新築の賃貸住宅は、不動産取得税の面では優遇されていると言えます。
中古の区分マンションを投資用に取得したケース
建物評価額が400万円、土地(敷地権)の評価額が300万円と仮定します。中古の投資用では建物の控除が使えないため、建物は400万円 × 3% で12万円、土地は300万円 × 1/2 × 3% で4万5,000円という計算になります(住宅用土地の軽減は建物側の要件を満たさないため適用されません)。合計で16万5,000円程度の負担です。
上記はあくまで仕組みを理解するための概算です。評価額は物件ごとに異なり、自治体によって取り扱いが変わる部分もあります。実際の金額は都道府県の税務事務所にご確認ください。
免税点と申告手続き
金額が小さければ課税されない
課税標準額が一定額に満たない場合は課税されません。土地は10万円、新築・増改築による家屋は23万円、売買などによる家屋は12万円が目安とされています。
軽減を受けるには申告が必要な場合がある
軽減措置は自動的に適用されることもありますが、自治体によっては申告書の提出が必要です。申告を忘れると軽減を受けられないまま納税することになるため、取得後は速やかに管轄の県税事務所へ確認しましょう。すでに納付してしまった後でも、還付を受けられる場合があります。
経費としての扱い
賃貸用として取得した物件の不動産取得税は、不動産所得の必要経費に算入できるものとして扱われます。ただし処理方法には選択の余地がある部分もあるため、詳細は税理士や税務署にご確認ください。
取得時にかかる他の税金と合わせて把握する
不動産取得税は取得時にかかる税金のひとつにすぎません。購入の前後では、次のような税金や費用が並行して発生します。
| 種類 | タイミング | 内容 |
|---|---|---|
| 印紙税 | 契約時 | 売買契約書・金銭消費貸借契約書に貼付 |
| 登録免許税 | 登記時 | 所有権移転登記・抵当権設定登記 |
| 不動産取得税 | 取得の数か月後 | 都道府県から通知が届く |
| 固定資産税・都市計画税 | 毎年 | 1月1日時点の所有者に課税。売買時は日割精算が一般的 |
これらを合計すると、物件価格とは別にまとまった金額が必要になります。諸費用は物件価格の7〜10%程度を見込んでおくという考え方が実務でよく使われますが、物件の種類や借入条件によって変わるため、個別に試算しておくのが確実です。
とくに固定資産税は、売買の際に引き渡し日を基準として日割りで精算されるのが一般的です。年の前半に購入すると精算金の負担が大きくなるため、資金計画に入れておきましょう。
購入前の準備で差がつく
不動産取得税でつまずくのは、税制が難しいからというより「いくらかかるか事前に調べていなかった」ことが原因です。物件購入では登記費用、仲介手数料、火災保険料など支出が続くため、あとから来る税金まで気が回らないという声はよく聞きます。
対策はシンプルで、購入検討の段階で固定資産税評価額を確認し、概算を出しておくことです。評価額は固定資産評価証明書や、売主が持っている納税通知書で確認できます。仲介会社に依頼すれば取得してもらえることが多いので、申し込みの段階で頼んでおきましょう。
書類の管理には、A4サイズのファイルボックスに物件ごとの仕切りを作り、評価証明書・売買契約書・納税通知書をまとめておく方法が扱いやすいです。年ごとに分けるならインデックス付きのクリアファイルが便利ですし、書類を電子化して残すならA4対応のスキャナーがあると検索性が上がります。概算の試算には12桁表示の実務用電卓が手元にあると計算が速く進みます。
税金を含めた不動産投資の全体像を学びたい方には、『まずはアパート一棟、買いなさい!』や『世界一やさしい不動産投資の教科書 1年生』といった書籍が、購入時の諸費用の考え方まで含めて整理してくれます。

よくある質問
不動産取得税はいつまでに納めますか
納税通知書に記載された納期限までに納付します。通常は通知書が届いてから1か月程度の期間が設けられています。分割納付を認めている自治体もあるため、資金繰りが厳しい場合は早めに相談してください。
相続で取得した場合もかかりますか
相続による取得は課税対象外です。ただし遺贈のうち一定のものや、贈与による取得は課税されます。
店舗や事務所を買った場合の税率は
住宅以外の建物は税率の引き下げ特例の対象外で、4%が適用されます。土地部分については3%の特例が適用されます。
納税通知書が届かないのですが
評価や事務処理に時間がかかっているだけの場合が多いのですが、住所変更などで届いていない可能性もあります。半年以上経っても届かない場合は、管轄の県税事務所に問い合わせましょう。
軽減の申告を忘れた場合はどうなりますか
自治体によっては、納付後でも申告により還付を受けられる場合があります。還付請求には期限があるため、気づいた時点ですぐに相談してください。
中古でもリフォームすれば軽減されますか
耐震基準に適合しない中古住宅を取得して改修を行う場合など、一定の条件下で適用される制度があります。ただし自己の居住用であることが前提となる仕組みが中心です。投資用として適用できるかは個別の判断になりますので、県税事務所や税理士にご確認ください。
まとめ
- 不動産取得税=固定資産税評価額×税率。売買価格ではない
- 土地・住宅の税率は3%(特例)、住宅以外の建物は4%
- 宅地は課税標準が評価額の2分の1になる特例がある
- 新築の賃貸住宅は1戸あたり1,200万円の控除が使える
- 中古住宅の控除は自己居住用が要件のため、投資用には適用されない
- 軽減には申告が必要な場合があり、忘れると満額の納税になる
不動産投資では、購入価格や利回りに目が向きがちですが、取得時の税金まで含めた総支出で判断することが失敗を避ける近道です。特例の期限や要件は改正されることがあるため、実際の取得にあたっては都道府県の税務窓口や税理士に最新の取り扱いをご確認ください。


