数十万円から数百万円で買える古い戸建てを再生して貸し出す。この投資手法で成否を分けるのは、物件価格ではなくリフォーム費用をどこまで正確に読めるかです。表面利回りが高く見えた物件も、想定外の工事が積み上がれば数字は一気に崩れます。
この記事では、ボロ戸建てのリフォームにかかる費用を箇所別に整理し、築年数ごとの総額の目安、見積もりの読み方、費用を抑える工夫までをまとめます。物件の探し方や客付けの流れではなく、あくまでお金の内訳に絞った内容です。

ボロ戸建てのリフォーム費用はどこで決まるか
費用を左右する3つの要素
同じ「築40年の木造戸建て」でも、リフォーム費用は数十万円から一千万円超まで幅があります。差を生むのは、主に次の3つです。
1. 水回りを触るかどうか:キッチン・浴室・洗面・トイレの4点を入れ替えると、それだけでまとまった金額になります。
2. 構造や下地に手を入れるか:床の傾き、シロアリ被害、雨漏りによる腐朽があると、表面を整えるだけでは済みません。
3. どこまで自分でやるか:内装の一部をDIYに切り替えるかどうかで、総額は大きく動きます。
逆に言えば、水回りが生きていて、構造に問題がない物件を見つけられれば、費用は表層のリフォームだけで収まります。ボロ戸建て投資で物件を選ぶとき、見た目の汚さより先に確認すべきなのがこの2点です。
「安い物件」ほど工事費が読みにくい理由
価格が極端に安い物件には理由があります。長く空き家だった建物は、水道管が錆びていたり、給湯器が動かなかったり、雨漏りで天井裏が傷んでいたりします。築30年を超える戸建ては、基礎・柱・配管といった見えない部分に劣化があるケースが多く、解体してから追加工事が出ることも珍しくありません。予算は1割から2割の余裕を持って組むのが現実的です。
箇所別のリフォーム費用の目安
水回り
キッチン・浴室・トイレ・洗面の4点をまとめて交換する、いわゆる水回り4点セットの費用相場は、一般に200万〜400万円程度とされています。グレードを抑えた普及品を選び、配管の位置を動かさなければ下限側に寄せられますが、間取りを変えて水回りを移設すると配管工事が加わって跳ね上がります。
賃貸用の再生であれば、設備そのものより「清潔に見えるか」「お湯がきちんと出るか」のほうが入居判断に効きます。高機能な設備を入れても家賃に転嫁しづらいため、普及グレードで十分というのが実務的な考え方です。
内装(床・壁・天井)
クロスの張り替え、床材の張り替え、建具の調整といった内装工事は、面積に比例して増えていきます。和室を洋室に変える、畳をフローリングに替えるといった変更を加えると、下地の造作が入るぶん単価が上がります。
コストを抑えるなら、既存の床の上から重ね張りできるサンゲツのクッションフロアや、東リのフロアタイルのような施工性のよい材料が選ばれます。壁も、下地が健全であれば上から塗れるアサヒペンの水性塗料やニッペホームプロダクツの室内用水性ペイントで仕上げる方法があります。
屋根・外壁
外壁塗装や屋根の塗装・葺き替えは、足場代が固定的にかかるのが特徴です。塗装だけなら数十万円から百数十万円、屋根の葺き替えや外壁の張り替えまで踏み込むと数百万円規模になります。雨漏りを放置したまま内装だけ整えるのは、いちばん避けたい進め方です。内装が仕上がった後に雨が入れば、やり直しになります。
設備・その他
給湯器の交換、電気配線の更新、分電盤の容量アップ、シロアリ防除、ハウスクリーニング、残置物の撤去。ボロ戸建てではこの「その他」が意外と積み上がります。とくに残置物の処分費は、家財が丸ごと残っている物件だと数十万円になることもあり、購入前に室内を見て量を把握しておくべき項目です。

築年数と工事範囲から見た総額の目安
戸建てのリフォームは、傷んでいる範囲によって総額のレンジが変わります。一般に語られる目安を整理すると、次のような形になります。
| 工事の範囲 | 主な内容 | 総額の目安 |
|---|---|---|
| 部分的な補修 | 外壁・屋根の塗装、給湯器交換、設備の部分修繕 | 100万〜300万円 |
| 水回り+外装 | キッチン・浴室・トイレの更新、外壁屋根の塗装 | 300万〜800万円 |
| 全面的な内外装 | 水回り全般+内装全面+外装、断熱の見直し | 800万〜1,500万円 |
| 大規模改修 | 耐震補強、断熱改修、構造体の補修まで | 1,500万〜2,500万円 |
投資用のボロ戸建て再生で現実的に選ばれるのは、上の2段階までです。全面改修まで踏み込むと、地方の家賃水準では回収年数が長くなりすぎます。かけた工事費を何年で家賃が返してくれるかを計算しながら、工事範囲を切り分けていくことになります。投資回収の計算の仕方は、以下の記事でも整理しています。

なお、業者にすべて依頼して内装・外装ともにリフォームする場合、築30年程度の戸建てで300万円程度という目安が語られることがあります。ただしこれは物件の状態と地域の職人単価によって上下するため、あくまで出発点の数字として扱ってください。
ここに挙げた金額はいずれも一般的に語られる相場であり、実際の費用は建物の状態・地域・時期によって大きく変わります。資材価格や職人の人件費も変動するため、購入判断は現地で取った見積もりをもとに行ってください。
見積もりの取り方と読み方
買付を入れる前に概算を取る
ボロ戸建て投資でよくある失敗が、「買ってから見積もりを取ったら想定の倍だった」というものです。内見の段階でリフォーム業者に同行してもらい、概算を出してもらえる関係を作っておくと、この事故を避けられます。
すぐに業者が見つからない場合でも、水回りの状態、雨漏りの跡、床の傾き、シロアリの痕跡、この4点は自分でチェックできます。床が明らかに傾いている物件は、初心者のうちは見送るほうが安全です。
「一式」の見積もりを分解する
見積書に「内装工事一式 150万円」とだけ書かれていると、他社と比較できません。数量と単価に分けてもらい、どこにいくらかかっているのかを見えるようにしてもらいましょう。分解された見積もりであれば、「この部屋のクロスは既存のままでいい」「浴室はハウスクリーニングで済ませたい」といった調整もできます。
見積書に不明瞭な項目がないか、金額が相場から外れていないかを自分で判断しきれない場合は、国土交通省のリフォーム見積相談制度という窓口があります。住まいるダイヤルで見積内容や追加費用について相談でき、追加費用チェックリストも公開されています。
相見積もりは2〜3社まで
比較のために何社も回ると、現地立会いだけで時間が溶けます。2〜3社に絞り、同じ工事範囲の条件を伝えて出してもらうのが効率的です。金額だけでなく、追加工事が出たときの扱いや、工期、支払い条件も比べておきましょう。リフォーム工事をめぐる契約トラブルの事例は国民生活センターにも寄せられているので、契約前に典型的なパターンを知っておくと防ぎやすくなります。


費用を抑える現実的な方法
DIYに回す範囲を決める
高利回りを実現している投資家の多くは、内装の一部を自分で手がけて工事費を圧縮しています。とはいえ、電気工事や給排水の配管、ガス周りは資格が要る領域なので、DIYの対象になるのは主にクロス張り、塗装、床の重ね張り、清掃、庭木の処理あたりです。
そろえておくと作業が進む道具としては、マキタの18V充電式インパクトドライバのような信頼できるメーカーの電動工具が定番です。バッテリーを共用できるので、後から丸ノコやサンダーを買い足しても無駄になりません。外壁やブロック塀、ベランダの汚れ落としにはケルヒャーの家庭用高圧洗浄機(K3・K5などのシリーズ)が使われます。地味に効くのがワークマンの作業用ニーパッドや厚手のニトリル手袋で、床作業が長時間になるボロ戸建てでは体の消耗が変わります。
初めての現場では、養生から解体、下地処理まで手順を追えるDIYリフォームの入門書を1冊手元に置いておくと、手戻りが減ります。
設備は中古・アウトレットも検討する
住宅設備には、展示品やアウトレット品を扱う流通ルートがあります。型落ちのキッチンやユニットバスを安く入手できることがあり、賃貸用であれば十分に機能します。ただし施工業者が扱いに慣れていないと取り付けを断られることもあるため、事前の相談が必要です。
補助金・助成金の有無を調べる
耐震改修や省エネ改修、空き家の活用については、自治体が補助制度を設けていることがあります。投資用物件が対象外とされる制度も多いのですが、対象になるかどうかは自治体ごとに条件が違うため、物件所在地の役所に確認する価値はあります。募集期間や予算枠が決まっている制度が多いので、工事の着手前に問い合わせておきましょう。
工事の進め方と工程
残置物撤去から始める
家財が残ったままでは、調査も工事も始まりません。まず残置物を片付け、建物の状態を目で見える形にします。この段階で床下や天井裏を確認しておくと、後から出てくる追加工事を減らせます。処分費を抑えたい場合は、リサイクルショップに買い取ってもらえる家財と、自治体の粗大ごみで出せるものを仕分けると差が出ます。
雨仕舞いと構造の補修
屋根と外壁の補修は、内装より先に済ませます。雨漏りを止めないまま内装を仕上げると、やり直しになるからです。シロアリの被害が見つかった場合も、この段階で防除と木部の補修を行います。見えなくなる部分の工事を後回しにしないのが、築古再生の鉄則です。
水回りと内装の仕上げ
構造と防水の目処が立ったら、水回りの設備更新に進みます。配管の状態を確認し、必要なら更新します。最後に内装のクロスや床材を仕上げ、ハウスクリーニングで完了です。この順番を守れば、手戻りによる無駄な出費を避けられます。
工期の目安と家賃の機会損失
工事期間中は家賃が入りません。工期が1か月延びれば、その分の家賃収入が失われます。工事費を数万円安くするために工期が1か月延びるなら、それは損という計算になることもあります。金額だけでなく、いつ入居募集を開始できるかも含めて業者を選びましょう。募集から客付けまでの進め方は、以下の記事で解説しています。



よくある質問
Q. リフォーム費用はローンで借りられますか
物件購入とリフォーム費用をまとめて融資してもらえるかは、金融機関と物件の評価によって異なります。低価格の中古戸建ては担保評価が付きにくく、現金で購入してリフォーム部分をリフォームローンで賄う形をとる方もいます。借入の可否や条件は個別に判断されるため、複数の金融機関に相談して確かめてください。
Q. どこまで直せば入居者は決まりますか
地域の家賃水準と競合物件の状態によります。周辺の賃貸物件をポータルサイトで見て、同じ家賃帯の部屋がどの程度の内装なのかを確認するのがいちばん早い方法です。競合より少しだけ見栄えがよければ十分で、そこを超える投資は回収しづらくなります。
Q. 工事の途中で追加費用が出たらどうすればいいですか
壁や床を剥がしてから腐朽が見つかる、というのはボロ戸建てでは日常的に起こります。あらかじめ契約書で追加工事の扱いを決めておき、発生した時点で書面の変更見積もりをもらってから着手してもらう流れにしておくと、後のトラブルを避けられます。
Q. 自分でやると工期はどれくらい延びますか
本業がある方が週末だけ作業する場合、業者施工なら数週間で終わる範囲が数か月に延びることもあります。その間は家賃が入らないため、浮いた工事費と、遅れた家賃収入を差し引きして判断するのが実際の考え方です。すべてをDIYにするのではなく、工期に効く部分は業者に任せる切り分けが現実的でしょう。
Q. 火災保険は使えますか
台風や雪などの自然災害による損傷であれば、加入している火災保険の補償対象になる場合があります。ただし経年劣化は対象外です。「保険で無料でリフォームできる」といった勧誘には応じず、保険会社に直接確認してください。
まとめ
ボロ戸建てのリフォーム費用は、水回りを触るか、構造に手を入れるか、どこまで自分でやるかの3点で決まります。箇所別では水回り4点で200万〜400万円、部分補修で100万〜300万円、水回りと外装まで含めると300万〜800万円といったレンジが一般的な目安です。
金額そのものより大切なのは、買付を入れる前に概算を掴んでおくことと、1〜2割の予備費を組んでおくことです。この2つを守れば、想定外の追加工事が出ても計画は破綻しません。利回りの数値は物件や運営状況によって大きく変わりますから、他人の成功事例の数字ではなく、自分の物件の見積もりで判断していきましょう。




