不動産投資を始めると、必ず向き合うことになるのが確定申告です。給与所得だけだった頃は年末調整で完結していたのに、物件を1戸持った途端、家賃・管理費・修繕費・減価償却と、扱う項目が一気に増えます。「これは経費になるのか」「減価償却はどう計算するのか」と調べているうちに、休日が丸ごと消えてしまったという声もよく聞きます。
そこで検討したくなるのが税理士への依頼です。ただ、費用の相場が分からないまま問い合わせるのは気が重いという方も多いでしょう。この記事では、不動産投資で税理士に依頼したときの費用の目安と、依頼する形態ごとの違いを整理します。

不動産投資で税理士に依頼できる業務の範囲
確定申告書の作成と提出
もっとも依頼が多いのがこの部分です。1年分の家賃収入と経費を集計し、不動産所得を計算して確定申告書を作成します。青色申告をしている場合は、貸借対照表と損益計算書の作成もここに含まれます。
不動産所得の基本的な考え方は国税庁「不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」に整理されています。まずは一次情報に目を通したうえで、判断に迷う部分だけを相談するという進め方もあります。
記帳代行
領収書や通帳の明細をもとに、日々の取引を帳簿に記録する作業です。この作業を自分でやるか任せるかで、費用は大きく変わります。会計ソフトに自分で入力していれば記帳代行は不要ですが、領収書を箱に貯めているだけの状態なら、まとめて依頼することになります。
自分で記帳を進める場合は、不動産の確定申告を扱った本を手元に置いておくと、仕訳で迷う場面を減らせます。
税務相談・節税の検討
減価償却の取り方、修繕費と資本的支出の線引き、法人化のタイミング、物件を売却したときの譲渡所得など、判断に幅がある論点について相談する業務です。この領域は、誤った処理をすると後から修正申告や追徴課税につながるため、専門家の見解を得る価値が大きい部分です。
税務調査への対応
税務調査が入った際の立ち会いや、税務署とのやり取りを担当してもらう業務です。通常の顧問料とは別に、立ち会い日当が設定されているケースが一般的です。
不動産投資の税理士費用の相場
確定申告だけを単発で依頼する場合
顧問契約を結ばず、確定申告のみをスポットで依頼する形です。複数の税理士事務所や紹介サイトの情報では、おおむね10万円前後から20万円程度がひとつの目安とされています。ただし、これは物件数や取引の複雑さで上下します。
区分マンション1〜2戸で、会計ソフトへの入力まで自分で終わっている状態なら、より抑えた金額を提示する事務所もあります。逆に、領収書の束を丸ごと渡す「丸投げ」に近い形だと、記帳代行分が上乗せされます。
顧問契約を結ぶ場合
年間を通じて相談できる体制を作る形です。相場としては月額1万円台からというレンジで紹介されることが多く、年間では20万〜30万円程度という説明が一般的です。これに加えて、決算・確定申告時の報酬が別途発生する事務所もあります。
物件数が増えたり、法人を設立したり、複数の金融機関と付き合うようになると、月額はこれより上がっていきます。提示された金額に何が含まれていて、何が別料金なのかを、契約前に必ず書面で確認してください。記帳代行が含まれるかどうかで、実質的な負担は大きく変わります。
ここに挙げた金額は、複数の情報源で示されている一般的なレンジです。税理士報酬は自由化されており、事務所ごとに設定が異なります。実際の金額は必ず見積もりを取って確認してください。

費用が上がる要因
| 要因 | 費用への影響 |
|---|---|
| 物件数・室数が多い | 集計と仕訳の量が増えるため上がる |
| 記帳を丸ごと任せる | 記帳代行の費用が加算される |
| 法人を設立している | 法人税申告が加わり個人より高くなる |
| 物件を売却した年 | 譲渡所得の計算が加わる |
| 消費税の課税事業者 | 消費税申告が別途必要になる |
税理士に依頼するかどうかの判断軸
物件数と規模で考える
区分マンション1戸だけであれば、会計ソフトを使って自分で申告している方も少なくありません。取引の件数が限られており、パターンも毎年ほぼ同じだからです。
一方で、いわゆる5棟10室基準を満たす事業的規模になってくると、扱う数字も判断の場面も増えます。青色申告特別控除の要件については国税庁「No.2072 青色申告特別控除」に条件が明記されており、複式簿記による記帳や貸借対照表の添付など、独力では負担の大きい要件が含まれます。
自分の時給で計算してみる
確定申告に何時間かかっているかを一度記録してみると、判断しやすくなります。領収書の整理から入力、申告書の作成まで含めて年間30時間かかっているとして、その時間を本業や物件探しに回せるならどれだけの価値があるか、という比較です。
節税額だけで判断すると、税理士費用は割に合わないように見えることがあります。しかし、時間と精神的な負担、そして誤処理のリスクまで含めると評価は変わります。
自分でやるなら道具を揃える
自力で申告する場合は、不動産所得に対応した会計ソフトが前提になります。freee会計やマネーフォワード クラウド確定申告、弥生の青色申告オンラインといったクラウド型のサービスは、銀行口座やクレジットカードとの連携に対応しており、入力の手間を減らせます。
マネーフォワード クラウド確定申告は、公式サイトで不動産所得の入力と、青色申告決算書・確定申告書の作成に対応すると案内されています。1か月間の無料トライアルはクレジットカードの登録なしで始められるので、自力で進めるか税理士に頼むかを決める前に、画面を触って確かめる使い方もできます。税務の判断に迷う点は、税務署や税理士に確認してください。

領収書の管理には、月ごとに分けられるA4サイズのドキュメントファイルや、レシートをまとめて取り込めるScanSnapのようなドキュメントスキャナがあると作業が進みます。確定申告の時期になってから半年分の領収書を探し回るのは、想像以上に消耗する作業です。




不動産投資に強い税理士の選び方
不動産分野の実績があるか
税理士にも得意分野があります。法人の決算を中心にしている事務所と、不動産オーナーを多く抱えている事務所では、提案の内容が変わります。修繕費と資本的支出の判断、建物と土地の按分、減価償却の年数設定といった不動産特有の論点に慣れているかどうかは、初回相談で質問してみると分かります。
連絡の取りやすさ
年に1回しかやり取りしないなら大きな問題になりませんが、顧問契約を結ぶなら連絡手段は重要です。メールのみか、チャットに対応しているか、返信までにどれくらいかかるか。物件の購入判断で急ぎの相談をしたいとき、返信が1週間後では意味がありません。
料金体系が明示されているか
ホームページに料金表を掲載している事務所は比較がしやすくなります。掲載がない場合でも、見積もりの段階で内訳を出してもらってください。「別途」という言葉が何を指すのかを曖昧にしたまま契約すると、後から想定外の請求が出てきます。
初回相談を活用する
初回相談を無料としている事務所は少なくありません。複数の事務所で同じ質問をしてみると、回答の深さや相性の違いが見えてきます。税理士は長い付き合いになる相手なので、金額だけで決めない方が結果的にうまくいきます。相談に持ち込む収支の見通しを整理しておきたい方は、無料シミュレーションツールの使い方を以下の記事でまとめています。



相談前に「物件の種類と戸数」「年間の家賃収入」「記帳をどこまで自分でやるか」「法人化の予定があるか」の4点をメモしておくと、初回相談で具体的な見積もりが出やすくなります。
不動産投資の税理士費用に関するQ&A
Q. 区分マンション1戸でも税理士に頼むべきですか
1戸であれば自分で申告している方も多く、必須とはいえません。ただし、初年度は取得費用の按分や減価償却の設定など判断が必要な項目があるため、初年度だけ依頼して、2年目以降は前年の申告書を参考に自分で行うという進め方をしている方もいます。
Q. 税理士費用は経費になりますか
不動産所得に関わる部分の税理士報酬は、必要経費として計上できると一般に扱われています。ただし、個人的な相続相談など不動産賃貸業と関係のない部分は対象外です。線引きに迷う場合は、依頼先の税理士に直接確認してください。
Q. 途中で税理士を変えることはできますか
できます。契約期間や解約予告の条件は契約書に定められているため、まずそこを確認してください。変更の際は、過去の申告書・決算書・帳簿データの引き継ぎが必要になります。会計ソフトのデータ形式が異なると引き継ぎに手間がかかるため、事前に新旧両方の事務所に確認しておくと安全です。
Q. 記帳代行まで頼むといくらくらい上がりますか
取引件数によりますが、月額顧問料に数千円から1万円台が加算されるという説明をしている事務所があります。件数連動の料金にしているところもあるため、年間の取引件数を伝えたうえで見積もりを取るのが確実です。
Q. 確定申告を自分でやって間違えたらどうなりますか
申告内容に誤りがあった場合は、修正申告や更正の請求で訂正します。納める税金が不足していた場合には加算税や延滞税が発生することがあります。気づいた時点で早めに対応するほど負担は小さくなるため、放置せず税務署か税理士に相談してください。
Q. 法人化したら税理士は必須ですか
法律上の義務ではありませんが、法人税・地方税・消費税と申告の種類が増え、決算書の様式も個人より複雑になります。実務上は依頼している方が大半です。法人化を検討する段階で、税理士に試算してもらってから判断する流れが一般的です。
まとめ
不動産投資における税理士費用は、確定申告のみの単発依頼で10万円前後から、顧問契約なら月額1万円台からというレンジで語られることが多い分野です。ただし物件数・記帳の範囲・法人の有無で大きく変動するため、相場を頭に入れたうえで、必ず複数の事務所から見積もりを取ることをおすすめします。
依頼するかどうかは、節税額だけでなく、自分がかけている時間と誤処理のリスクを含めて判断してください。まずは物件数と年間家賃収入を整理して、初回相談に持ち込むところから始めるとスムーズです。


