不動産投資の成否を分ける要素として、物件そのものと同じくらい重要なのが、どの不動産会社と組むかです。同じエリア、同じ価格帯の物件でも、提示される情報の質と、購入後のサポート体制はまったく違います。
そして、不動産会社を見極める手段は感覚だけではありません。免許番号や行政処分歴といった、誰でも無料で確認できる公的な情報が用意されています。この記事では、確認すべき公的情報の調べ方から、面談での見極め方、警戒すべきサインまでを順に解説します。

不動産会社には立場の違いがある
「不動産会社」とひとくくりにされがちですが、投資家との関わり方は立場によって異なります。この違いを理解していないと、相手の発言の背景が読めません。
売主業者
自社で仕入れた物件を自社の商品として販売する会社です。仲介手数料がかからない一方で、販売価格には仕入れ値との差額が含まれます。新築ワンルームの販売会社の多くはこの立場です。
仲介業者
売主と買主の間に立って取引をまとめる会社です。成約時の仲介手数料が収益になるため、買主に長く付き合ってもらうことが利益につながる構造で、無理な物件を押し込むメリットが相対的に小さいとも言えます。ただし、これは会社の方針次第です。
管理会社
購入後の入居者募集、家賃回収、クレーム対応、原状回復の手配を担う会社です。購入までの関係が良くても、管理が弱ければ運用は苦しくなります。売買と管理の両方を手がける会社なら、購入前に管理の実績も確認しておきたいところです。
相手がどの立場で自分と話しているのかを最初に確認しましょう。売主業者に「他社の物件と比べてどうですか」と聞いても、公平な答えは返ってきにくいのが自然です。
業界の基本的な仕組みを本で押さえておくと、相手の発言の背景を読み取りやすくなります。
公的な情報で会社を調べる手順
手順1:宅地建物取引業の免許番号を確認する
不動産の売買や仲介を業として行うには、宅地建物取引業の免許が必要です。免許番号は「国土交通大臣(○)第△△△△号」または「××県知事(○)第△△△△号」という形式で表記され、会社の公式サイトや広告に記載が義務づけられています。
2つ以上の都道府県に事務所を置く場合は大臣免許、1つの都道府県内であれば知事免許になります。大臣免許だから優れている、知事免許だから劣っているという関係ではありません。事務所の展開範囲を示しているだけです。
注目したいのはカッコ内の数字で、これは免許の更新回数を表します。免許は5年ごとの更新のため、この数字が大きいほど営業年数が長いことが分かります。番号の記載がまったく見当たらない場合は、そもそも免許を受けていない可能性があります。
手順2:免許情報を公式のシステムで照合する
国土交通省の建設業者・宅建業者等企業情報検索システムでは、宅地建物取引業者の免許情報を検索できます。会社が名乗っている免許番号と実際の登録内容が一致するかを、自分の目で確認できます。
手順3:行政処分歴を調べる
国土交通省のネガティブ情報等検索サイトでは、国土交通省が所管する事業者の過去の行政処分歴を検索できます。宅地建物取引業も対象に含まれており、業務停止や指示処分の履歴があるかどうかを確認できます。
ここに履歴が出てきた場合、それだけで取引をやめるべきとまでは言えませんが、処分の内容と時期を確認し、面談の場で状況を尋ねてみる価値はあります。
手順4:会社概要を読む
設立年、資本金、従業員数、主要な事業内容、代表者名、本店所在地。これらが公式サイトに明記されているかを確認します。特に、投資用不動産の販売だけを行っている会社なのか、賃貸管理まで自社で手がけているのかは、購入後の関係に直結します。実際の会社を題材に確認の観点を知りたい方は、トーシンパートナーズを取り上げた以下の記事も参考になります。





面談で見極めるポイント
リスクの説明をするかどうか
最も分かりやすい判断材料がこれです。空室、家賃下落、金利上昇、修繕費、売却時に価格が下がる可能性。これらを聞く前から説明してくれる担当者は、長く付き合える相手である可能性が高いといえます。
逆に、良い面だけを並べ、こちらがリスクを尋ねても「大丈夫です」で終わらせる担当者は、購入後に問題が起きたときも同じ対応になると考えたほうが自然です。
資料を出せるかどうか
レントロール、修繕履歴、管理規約、長期修繕計画、周辺の募集事例。これらを求めたときに、期限を切って出してくれるかを見ます。「後でお渡しします」が繰り返される場合は、そもそも手元に情報がない可能性があります。
断ったあとの対応
一度見送ったときの反応は、その会社の姿勢がよく表れる場面です。理由を聞いて次の提案につなげようとするのか、それとも態度が変わるのか。ここは意図的に一度断ってみて確認する価値があります。
3社以上と話す
1社だけの説明を聞いていると、その会社の主張が業界の常識に見えてしまいます。最低でも3社と面談し、同じ質問を投げて答えを比較することで、どこが標準的な説明で、どこがその会社独自の主張なのかが見えてきます。
最初の1社を自力で探すのが負担に感じられる場合は、不動産投資のアドバイザーを紹介するサービス「ウェルスコーチ」という選択肢もあります。公式サイトでは相談は無料と案内されていますが、紹介先は別の会社であり、物件を買うかどうかの判断は利用者自身が行います。不動産投資は元本が保証されたものではないため、紹介された会社についても同じ質問で比べるようにしてください。詳しい内容は公式サイトで確認できます。



次のような対応が出てきたら、いったん距離を置きましょう。その場での契約を強く求められる/断っても電話が続く/節税や年金対策の話ばかりで収支の説明が薄い/重要事項説明を形式的に済ませようとする/契約書のひな形を事前に見せてくれない。トラブルを感じた場合は、国民生活センターなどの公的な相談窓口を利用できます。
同じ質問を全社に投げて答えを比べる
比較を感覚に頼らないために、質問をあらかじめ固定しておくと精度が上がります。実際に使いやすい質問を挙げておきます。
「この物件を私に勧める理由は何ですか」
提案の根拠を問う質問です。私の年収や自己資金、投資目的を踏まえた答えが返ってくるか、それとも物件の一般的な説明が返ってくるかで、こちらの状況をどれだけ理解しているかが分かります。
「この物件で一番の懸念点はどこですか」
弱点を自分から挙げられるかを見る質問です。どんな物件にも必ず弱点はあり、それを言語化できる担当者は物件を実際に精査していると考えられます。「特にありません」という答えが返ってきたら、精査していないか、あるいは伝える気がないかのどちらかです。
「同じ条件で、御社が扱っていない物件も含めるとどうなりますか」
自社商品以外の選択肢に触れられるかを問う質問です。売主業者であれば自社物件を勧めるのは当然ですが、市場全体の中での位置づけを説明できる担当者は、知識の幅があります。
「購入後、私が最初にやるべきことは何ですか」
購入後を見据えているかが分かります。火災保険の手配、確定申告の準備、管理会社との打ち合わせなど、実務的な答えが返ってくれば、購入させて終わりという姿勢ではないと判断できます。
面談に臨むための準備
会社を見極めるには、こちらも準備が要ります。何も持たずに座ると、話の主導権を握られたまま時間だけが過ぎてしまいます。
- 質問リストを印刷したA4の紙:聞くことを事前に書き出しておくと、聞き漏らしを防げます。同じリストを3社に使えば比較もしやすくなります
- ICレコーダー:説明内容を後から確認できます。録音する場合は、必ず相手に一言断ってから使いましょう
- A4サイズのクリアファイルとファイルボックス:会社ごとに1冊ずつ分けて資料を保管すると、後日の比較が容易になります
- 12桁表示の実務電卓:その場で提示された数字を自分で検算できると、話の精度が上がります
知識面では、『ゼロからの不動産投資』(赤井誠)のような実践書を先に読んでおくと、担当者の説明が一般的な内容なのか独自の主張なのかを判断しやすくなります。専門用語で立ち止まらずに済むだけでも、面談の密度は変わります。


購入後を見据えた確認
不動産投資は購入して終わりではありません。むしろそこからが長い付き合いになります。契約前に、次の点を確認しておきましょう。
管理を誰が担うのか
自社で管理するのか、系列会社に委託するのか、こちらで自由に選べるのか。管理委託料の水準と、募集時の広告料の扱いもあわせて確認します。管理会社を後から変更できる契約になっているかも重要です。
入居付けの実績
その会社が管理している物件の入居率や、平均的な空室期間を尋ねてみましょう。数字で答えられる会社は、日々の運営を数字で管理しているということです。
売却時の対応
将来売却する際に相談できるのか、他社に依頼しても問題ないのか。購入時に出口の話ができる会社は、投資家の立場で考えてくれている可能性が高いといえます。


不動産会社の選び方に関するよくある質問
Q. 大手と中小、どちらを選ぶべきですか
規模だけで決めるものではありません。大手は情報量と信用力に強みがあり、中小は特定エリアや特定手法に深い知見を持つ場合があります。自分が狙う物件の種別・エリアに、その会社がどれだけ実績を持っているかで判断するほうが実用的です。
Q. 免許の更新回数が少ない会社は避けるべきですか
更新回数は営業年数の目安にはなりますが、それだけで良し悪しは決まりません。設立が新しくても、代表者や担当者が業界で長く経験を積んでいるケースはあります。更新回数は「その会社が長く続いているか」を示す一つの材料として使い、他の情報と合わせて判断してください。
Q. 節税効果を強調されました。どう受け止めればよいですか
不動産投資には減価償却などの仕組みがあり、所得の状況によって税負担が変わることは事実です。ただし、その効果は個人の所得や物件の構造・築年数によって大きく異なり、一律に語れるものではありません。収支そのものが成立していない物件を、税効果だけを理由に購入するのは避けるべきです。具体的な税額の判断は税理士に確認してください。
Q. 訪問や電話がしつこい場合はどうすればよいですか
宅地建物取引業法では、勧誘を受けた者が契約しない旨を伝えた場合に、勧誘を継続することが禁止されています。明確に「契約しません」と伝えたうえで記録を残し、それでも続く場合は免許を出している行政庁や消費生活センターへ相談するという流れになります。
Q. 地元の会社と都市部の会社、どちらに相談すべきですか
購入を検討しているエリアに拠点を持つ会社は、そのエリアの入居需要や家賃相場を肌感覚で把握しているという強みがあります。一方で、遠方から購入する場合は、現地に行けない自分の代わりに状況を報告してくれる体制があるかが重要になります。物件の所在地に営業所と管理拠点があるかどうかは、購入後の運営に直結しますので、必ず確認してください。
Q. 担当者が変わった場合はどうなりますか
不動産会社は人の入れ替わりが起こりやすい業種です。担当者個人との相性だけで会社を選ぶと、異動や退職の際に一気に不便になります。引き継ぎの体制があるか、顧客情報が会社として管理されているかを、契約前に確認しておくと安心です。
Q. セミナーで知り合った会社は信用できますか
セミナーの開催自体は、その会社の信頼性を示すものではありません。開催しているかどうかではなく、これまで述べてきた免許情報・処分歴・説明内容・資料の開示姿勢で判断してください。セミナーはあくまで出会いの場の一つです。
まとめ
不動産会社を選ぶ際は、まず相手がどの立場(売主・仲介・管理)で話しているのかを把握し、そのうえで免許番号の照合と行政処分歴の確認という公的な情報チェックを行います。どちらも無料で、15分程度あれば終わる作業です。
面談では、リスクを自分から説明するか、求めた資料を期限内に出すか、断ったあとの対応が変わらないか、という3点を見ます。そして必ず3社以上と話し、同じ質問をぶつけて答えを比べてください。準備した質問リストと電卓を持って臨むだけで、得られる情報の質は大きく変わります。焦らず、納得できる相手が見つかるまで探し続けることが、結果的に一番の近道になります。


