入居者が退去してから3か月経っても募集の反応がない。修繕の相談をしてもレスポンスが遅い。家賃の入金明細が読みにくく、何にいくらかかったのか分からない。管理会社への不満は、こうした小さな引っかかりが積み重なって表面化します。
ただ、いざ変更しようとすると「入居者に迷惑がかかるのでは」「トラブルにならないか」と手が止まりがちです。実際のところ、管理会社の変更は手順さえ踏めば粛々と進められる手続きです。この記事では、契約内容の確認から新しい会社への引き継ぎまでの流れと、途中で起きやすい問題を整理します。

管理会社の変更を考えるきっかけ
空室が埋まらない
もっとも多い理由がこれです。募集条件が相場からずれていないか、写真や間取り図がポータルサイトにきちんと載っているか、内見の対応が丁寧か。同じ物件でも、募集の打ち方ひとつで反響数は変わります。近隣の同条件の部屋が次々決まっているのに自分の部屋だけ残っているなら、募集力を疑う余地があります。
連絡が返ってこない
設備の故障や入居者からのクレームは、初動の速さがそのまま満足度に響きます。オーナーからの連絡に数日返信がない状態が続くなら、入居者への対応も同じ速度だと考えたほうが自然です。
報告内容が不透明
月次報告書に記載があるのは家賃の入金額だけで、修繕の内訳や滞納の状況が分からない。見積もりの相見積が取られておらず、工事費が妥当か判断できない。お金の流れが説明されない状態が続くのは、管理委託の関係としては健全ではありません。
管理料に見合っていないと感じる
管理委託料は家賃の5%前後で設定されることが多い項目です。金額の高さそのものより、その料率に対して何をしてもらっているかが問題になります。安いだけの会社に変えると業務範囲が狭くなり、結局自分の手間が増えることもあります。
管理会社に任せる範囲を見極めるには、賃貸経営の全体像を本で押さえておくと比べやすくなります。
変更を検討する前に、まずは現在の管理会社に不満点を具体的に伝えてみてください。担当者が変わるだけで解決するケースもあります。会社を変えると引き継ぎのコストが発生するため、改善の余地を先に探るほうが合理的です。
管理会社を変更する手順
手順1:現在の管理委託契約書を確認する
最初にやるべきは契約書の読み直しです。確認するのは次の項目です。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 契約期間 | 自動更新か、更新日はいつか |
| 解約予告期間 | 3か月前など、何か月前の通知が必要か |
| 解約通知の方法 | 書面が必要か、様式の指定があるか |
| 違約金の有無 | 期間内解約に金銭的なペナルティがあるか |
| 契約形態 | 管理委託かサブリース(家賃保証)か |
サブリース契約の場合は、通常の管理委託より解約のハードルが高くなります。サブリース会社は借主の立場にあるため、借地借家法の保護が働き、オーナー側からの解約には正当事由が求められる場面があります。サブリース契約をめぐる規制やトラブルの傾向は国土交通省「賃貸住宅管理業法ポータルサイト」のサブリース適正化のための措置にまとまっています。契約書を読んだうえで、必要なら弁護士に相談してください。
手順2:新しい管理会社を探して比較する
解約通知を出す前に、次の候補を複数見つけておきます。3社程度に声をかけ、管理委託料・業務範囲・報告方法・繁忙期の体制を並べて比較するのが基本です。物件のあるエリアで実際に募集を回している会社かどうかは、ポータルサイトで自分の物件周辺の掲載元を見ると分かります。売買から賃貸管理までグループで手がける会社の例は、シノケンハーモニーを整理した以下の記事で触れています。

なお、管理戸数が200戸以上の賃貸住宅管理業者には登録が義務づけられています。制度の内容は国土交通省の賃貸住宅管理業法ポータルサイトで確認でき、登録業者かどうかも調べられます。
手順3:現管理会社へ解約を通知する
候補が固まったら、契約書に定められた期間を守って解約を通知します。多くの契約で3か月前の予告が設定されています。通知は必ず書面で行い、配達証明付きの内容証明郵便を使うと「聞いていない」という水掛け論を避けられます。
この段階で理由を細かく説明する必要はありません。感情的なやり取りになると引き継ぎが滞るため、事務的に淡々と進めるのが得策です。


手順4:引き継ぎ書類と鍵を受け取る
ここが変更作業の山場です。受け渡しが必要なものは想像以上に多く、抜けがあると後から困ります。
引き継ぎで受け取るもの:賃貸借契約書の原本、入居者名簿と連絡先、鍵(マスターキー・各室の合鍵)、敷金の残高と精算資料、家賃保証会社との契約書類、火災保険の付保証明、消防設備や貯水槽などの法定点検記録、修繕履歴、滞納者の状況、駐車場・駐輪場の使用契約。
特に見落とされやすいのが敷金の預り金と、家賃保証会社の契約引き継ぎです。保証会社によっては管理会社が変わると契約を継続できず、入居者に新しい保証会社との契約を結び直してもらう必要が出ます。手続きと費用の負担をどうするか、事前に新旧の管理会社と保証会社の三者で確認してください。
手順5:入居者へ通知する
管理会社が変わることと、家賃の振込先が変わることを入居者に案内します。通知は変更日の1か月前を目安に、書面で各戸に配布するのが一般的です。新しい緊急連絡先と、設備トラブル時の窓口を明記しておくと問い合わせの混乱を防げます。
振込先の変更は入居者にとって手間のかかる作業です。案内文には変更後の口座情報を大きく記載し、切り替え時期をはっきり書いてください。
手順6:切り替え後の入金を確認する
切り替え月は家賃の入金がずれやすいタイミングです。旧管理会社に振り込まれた分の送金、新管理会社からの初回送金、月割の管理料精算。最初の2〜3か月は、通帳と月次報告書を突き合わせて確認するようにしてください。


管理会社の変更で気をつけたいこと
タイミングは繁忙期を避ける
1月から3月は賃貸の繁忙期で、引き継ぎ作業と募集業務が重なります。この時期に切り替えると、募集が手薄になって空室期間が延びる可能性があります。閑散期にあたる時期に切り替えを完了させておくと、次の繁忙期を新しい体制で迎えられます。
月の区切りで切り替える
月の途中で切り替えると、家賃の按分計算や管理料の日割りが発生して事務が煩雑になります。月末・月初で区切ると、入金の照合が単純になります。
書類は自分の手元にも残す
引き継ぎ書類は新しい管理会社に渡すだけでなく、オーナー自身も控えを持っておいてください。次にまた変更することになったとき、自分の手元に一式あるかないかで負担がまったく違います。A4のファイルボックスに物件ごとにまとめておくか、スキャンしてクラウドに保存しておくと安心です。書類が数百枚単位になる場合は、ScanSnapのようなドキュメントスキャナがあると整理が一気に進みます。
管理料の安さだけで選ばない
管理委託料が1%違っても、家賃8万円の部屋なら月800円です。それに対し、空室が1か月延びれば8万円の損失になります。料率の差より、埋める力と対応の速さで判断するほうが、収支への影響は大きくなります。


不動産投資における管理会社の位置づけ
不動産投資の収支は、物件そのものの条件だけで決まるわけではありません。同じ部屋でも、募集の打ち方と入居後の対応次第で、稼働率にも入居期間にも差が出ます。管理会社は、オーナーが手を動かせない部分を代わりに担う存在であり、その質がそのまま運用成績に反映されます。
だからこそ、委託先を選び直すという判断は、物件を買い増すのと同じくらい収支に効いてくる場面があります。相性が合わないまま数年放置するより、一度きちんと比較してみる価値はあります。他のオーナーの体験談を参考にしたい方は、不動産投資ブログの探し方を以下の記事でまとめています。



管理会社の変更に関するQ&A
Q. 入居者に嫌がられませんか
振込先の変更という手間は発生しますが、対応が改善されれば入居者にとってもメリットがあります。丁寧な案内文と、新しい連絡先の明示があれば、大きなトラブルになることは多くありません。
Q. 解約予告期間を過ぎてしまった場合はどうなりますか
自動更新の契約であれば、次の更新日に向けて改めて予告を出すことになります。契約書に定めのない期間で強引に解約すると違約金や損害賠償の話になりかねないため、契約書の条項に沿って進めることが最優先です。
Q. 区分マンション1戸でも管理会社を変えられますか
変更できます。ただし1戸だけだと受託してもらえる会社が限られる場合があります。賃貸管理(入居者対応)と建物管理(共用部の管理組合業務)は別物なので、混同しないよう注意してください。区分オーナーが変更できるのは賃貸管理の委託先です。
Q. サブリースから通常の管理委託に切り替えられますか
契約内容によります。サブリースはオーナーが貸主、サブリース会社が借主という関係のため、解約には制約が生じることがあります。契約書の解約条項を確認し、難しそうであれば専門家に相談してください。
Q. 引き継ぎにはどれくらいの期間がかかりますか
解約通知から切り替え完了まで、予告期間を含めて3〜4か月程度を見ておくと余裕を持って進められます。書類の受け渡しと入居者への通知に時間が必要なため、急ぐと抜けが出やすくなります。
Q. 新しい管理会社はどこで探せばいいですか
物件のあるエリアで実際に賃貸募集を回している会社を当たるのが基本です。ポータルサイトで自分の物件と条件の近い部屋を検索し、掲載元として繰り返し出てくる会社をリストアップすると、そのエリアで動いている会社が見えてきます。管理戸数の規模だけでなく、担当者が物件を見に来てくれるか、募集条件の提案を具体的にしてくれるかも判断材料になります。初回の面談で「この部屋をいくらで、どう募集しますか」と聞いてみると、力量の差がはっきり出ます。
Q. 管理会社を変えると入居率は上がりますか
必ず上がるとは言えません。空室の原因が募集力ではなく、物件の設備や立地、賃料設定にある場合は、会社を変えても状況は動きにくくなります。変更を検討する前に、周辺の同条件の部屋がいくらで募集され、どれくらいの期間で決まっているかを調べてみてください。相場より高い賃料設定のまま会社だけ変えても、結果は変わりません。原因の切り分けを先に済ませておくと、変更後の期待値も現実的になります。
Q. 変更にかかる費用はありますか
新しい管理会社への事務手数料、入居者への通知にかかる印刷・郵送費、家賃保証会社の切り替え費用などが発生する場合があります。金額は状況によって変わるため、候補となる会社に見積もりを確認してください。
まとめ
不動産投資における管理会社の変更は、契約書の確認から始まり、新会社の選定、解約通知、引き継ぎ、入居者への案内という順序で進めます。逆の順序で動くと、解約できないのに新会社と契約してしまうといった問題が起きます。
解約予告は書面で、引き継ぎ書類はリスト化して抜け漏れを防ぐ。この2点を守れば、変更そのものは難しい作業ではありません。管理会社は物件の収支を左右する存在です。不満を抱えたまま何年も続けるより、一度きちんと比較してみることをおすすめします。


