共働き世帯の増加や、布団やスニーカーを丸洗いできる大型機の普及によって、コインランドリーを見かける機会が増えました。無人で運営でき、在庫を抱えることもない。そんなイメージから、土地活用や投資先の候補としてコインランドリーを検討する方が増えています。
一方で「思ったほど回らなかった」という声も少なくありません。コインランドリーは不動産投資というより、店舗ビジネスに近い性格を持っています。この記事では、利回りの目安、必要な初期費用、収支の組み立て方、そしてつまずきやすいポイントを順に整理していきます。

コインランドリー投資の3つの関わり方
ひとくちにコインランドリー投資といっても、関わり方によって必要な資金もリスクも変わります。
| 形態 | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 自己経営 | 物件と設備を自分で用意し、運営も自分で行う | 売上がそのまま収入になる。手間と判断はすべて自分 |
| フランチャイズ加盟 | 本部のブランドとノウハウを使って運営する | 立地調査や機器選定の支援を受けられる。ロイヤリティが発生する |
| 土地・建物を貸す | 運営会社に土地や建物を貸して賃料を受け取る | 設備投資が不要。収入は固定的だが売上が伸びても増えない |
設備を持たずに土地や建物を貸すだけであれば、不動産投資に近い形になります。自分で設備を購入して運営する場合は、店舗ビジネスの経営者になるということです。どの立場で関わるのかによって、必要な覚悟がまったく違います。
利回りの目安と、その前提
コインランドリー投資の利回りは、年8〜12%程度が期待できる水準として紹介されることが多く、初期投資の回収におおむね10年前後を見込む形が一般的です。
ただし、この数字にも前提があります。すでに所有している土地や空き店舗を使う場合と、土地から取得して建物を建てる場合とでは、分母になる投資額が桁違いになります。紹介されている利回りが、どこまでの費用を含んだ数字なのかを確認することが最初の一歩です。利回りの前提を比べるなら、トランクルーム投資の利回りを整理した以下の記事も参考になります。

表面利回り = 年間売上 ÷ 投資額 × 100
実質利回り =(年間売上 - 年間経費)÷(投資額 + 開業時の諸費用)× 100
コインランドリーは水道光熱費の割合が大きい業態なので、表面ではなく実質で判断する必要があります。
実質利回りは前提を変えながら何度も計算し直すことになるため、手元に電卓を置いておくと比較しやすくなります。
初期費用の目安
必要な資金は、店舗の規模と物件の調達方法で大きく変わります。おおまかな水準は次のとおりです。
| ケース | 費用の目安 |
|---|---|
| テナントを借りて小型店(15坪程度、洗濯機と乾燥機を合わせて10台強)を開業 | 2,000万円程度 |
| 自己所有の土地に建物を建てて開業 | 5,000万〜6,000万円程度 |
内訳としては、洗濯機・乾燥機といった機器の購入費が大きな割合を占め、そこに給排水やガス配管の工事費、内装、看板、両替機や決済端末、そして開業前の運転資金が加わります。フランチャイズに加盟する場合は加盟金が別途必要になり、開業後は毎月のロイヤリティも発生します。
機器は消耗品でもあります。導入から年数が経てば故障が増え、いずれ入れ替えの時期がきます。初期費用だけでなく、更新のための積み立てを最初から収支に組み込んでおくことが欠かせません。


収支をシミュレーションしてみる
テナントを借りて小型店を運営するケースで、収支の形を組み立ててみます。数値は説明のための仮定であり、実際の売上は立地と周辺人口によって大きく変わります。
| 項目 | 金額の例(年間) |
|---|---|
| 売上 | 720万円(月60万円) |
| 水道光熱費(ガス・電気・水道) | △180万円 |
| テナント賃料 | △180万円 |
| 清掃・巡回などの管理費 | △60万円 |
| 洗剤・備品・修繕 | △50万円 |
| 手残り(減価償却前) | およそ250万円 |
初期投資が2,000万円だとすると、この手残りベースでの利回りは12%台、回収には8年程度かかる計算になります。ここからフランチャイズのロイヤリティが引かれれば、当然ながら数字は下がります。計算式と経費の内訳から収益を組み立てる別の例は、以下の記事で確認できます。



注目したいのは水道光熱費が売上の2割以上を占める点です。乾燥機はガスを大量に使うため、エネルギー価格が上がると利益が直接圧迫されます。売上が横ばいでもコストが上がれば手残りが減る構造であることは、事前に理解しておく必要があります。
コインランドリー投資のメリット
無人で運営できる
接客のためのスタッフを常駐させる必要がなく、人件費を抑えられます。24時間営業にすれば、深夜や早朝の需要も取り込めます。
在庫を持たない
飲食業や小売業のような仕入れと在庫のリスクがありません。売上が落ち込んでも廃棄が発生しない点は、資金繰りのうえで扱いやすい特徴です。
景気の影響を受けにくいとされる
洗濯は生活に必要な行為であり、需要が急激に消えることは考えにくい業態です。悪天候が続く時期や花粉の季節には、むしろ利用が伸びる傾向があります。
狭い土地でも成立する
アパートを建てるには小さすぎる土地でも、店舗として使える広さがあれば検討できます。ただし利用者の駐車スペースが確保できるかどうかは、売上を左右する重要な条件になります。
つまずきやすいポイント
立地の見立てを誤る
最大の失敗要因がここです。周辺に単身世帯や共働き世帯がどれくらいいるか、車で来店しやすいか、駐車場を確保できるか。これらを調べずに開業すると、需要が見込めず赤字が続きます。持っている土地に合わせて業態を決めるのではなく、需要のある場所かどうかから逆算するという順序が大切です。
近隣に競合ができる
後から近くに新しい店舗ができると、利用が分散します。設備の新しさや洗剤の質、店内の清潔さで選ばれる業態でもあるため、開業したら終わりではなく、継続的な手入れが必要になります。
清掃と巡回の負担
無人であっても、店内が汚れていれば客足は遠のきます。糸くずの回収、床の清掃、両替機の補充、忘れ物への対応。見回りと清掃のために毎日足を運ぶのは、想像以上に負担になります。
店内の環境づくりでは、待ち時間を過ごしやすくする工夫が効きます。屋内用の防犯カメラを設置して安心感を高める、待合用の背もたれ付きベンチやA4サイズが入るマガジンラックを置く、センサー式のアルコールディスペンサーを入口に設置するといった細かい積み重ねが、選ばれ続ける店との差になります。
フランチャイズの条件を確認していない
加盟すればノウハウや立地調査の支援を受けられますが、ロイヤリティのぶん実質的な利回りは下がります。契約期間、途中解約の条件、機器の指定があるかどうかまで確認してから判断してください。
税制優遇についての注意
かつては、設備の即時償却を目的にコインランドリーへ出資する形の節税手法が広まっていました。しかし税制改正により、主要な事業ではないコインランドリー業で、運営の管理をほぼ全部他者に委託しているものは、中小企業経営強化税制などの対象から除外されています。
資金だけを出して運営を丸ごと任せ、税制優遇だけを受けるという組み立ては現在では通用しません。制度の内容は改正されることがあるため、適用の可否を検討する場合は国税庁の中小企業経営強化税制の説明を確認し、税理士にも相談してください。
コインランドリーはクリーニング業法の規制を受ける施設ではありませんが、各自治体が衛生管理のための指導要綱を定めており、管轄の保健所に「コインオペレーションクリーニング営業施設開設届」を提出するのが一般的な流れです。施設基準や届出の様式は地域によって異なり、開設前に保健所の確認を受ける運用になっている自治体もあるため、計画の段階で問い合わせておいてください。生活衛生関係の営業については厚生労働省の案内も参考になります。




成立しやすい立地の条件
・周辺に単身世帯やファミリー世帯が一定数ある
・車で来店でき、駐車スペースを2〜3台分以上確保できる
・スーパーやドラッグストアなど、待ち時間に立ち寄れる施設が近い
・幹線道路沿いなど、通りがかりに認知されやすい
・近隣に競合となる店舗が少ない、または稼働が高い
洗濯物を持って歩いて来る利用者よりも、車で運んでくる利用者のほうが多い業態です。駐車スペースの有無は売上に直結します。候補地を見に行くときは、車の入りやすさを必ず確認してください。
開業までの流れ
1. 商圏を調べる
候補地から半径1〜2キロメートルの範囲に、どれくらいの世帯が住んでいるかを調べます。自治体が公表している統計や住宅地図が手がかりになります。単身者向けのアパートが多いエリア、共働き世帯の多い新興住宅地、駐車場付きの物件が少ない地域などは、需要が生まれやすい条件です。
2. 競合を実地で確認する
既存店舗を平日の夜と土日の昼に訪れ、稼働している機械の台数を数えます。設備の新しさ、店内の清潔さ、料金設定、駐車台数も記録しておくと、自分の店をどう差別化するかの材料になります。
3. 事業計画をつくる
売上の想定、初期投資、毎月の固定費、機器更新の積み立てを一枚の表にまとめます。売上が想定の7割になっても資金が回るかどうかを必ず確認してください。計画は強気ではなく弱気の前提で組むのが、この業態では大切です。
計画の組み立て方は、事業計画書の作り方を解説した本を参考にすると、融資の相談に使える形に整理しやすくなります。
4. 資金調達と業者選定
自己資金だけで足りない場合は融資を検討します。事業性の融資となるため、事業計画の内容が問われます。機器メーカーやフランチャイズ本部からは複数の提案を受け、条件を並べて比較しましょう。
5. 届出と開業準備
保健所への届出、消防への相談、ガス設備の工事など、開業前に済ませるべき手続きがあります。工事の日程は天候や設備の納期に左右されるため、余裕を持ったスケジュールを組んでおくと安心です。


よくある質問
Q. 副業として運営できますか
無人運営が基本のため、会社員が副業として手がけている例もあります。ただし清掃や巡回、故障対応は発生します。管理を委託する方法もありますが、その分の費用は収支から差し引かれます。
Q. 何年で投資を回収できますか
一般には10年前後を見込む形が多いようです。ただし売上が想定を下回れば当然延びますし、機器の入れ替え時期が来れば追加の投資も必要になります。回収期間だけで判断せず、更新まで含めた長期の収支で考えてください。
Q. アパート経営とどちらがよいですか
性格がまったく異なります。アパートは入居者がいれば毎月の家賃が読めますが、コインランドリーは売上が日々変動します。安定を重視するなら賃貸、事業として伸ばす余地を取りにいくならコインランドリー、という整理になります。
Q. どんな設備を入れるべきですか
周辺の競合が何を置いているかで変わります。大型の布団乾燥に対応した機器や、スニーカー専用機を置くと差別化になる場合があります。フランチャイズに加盟する場合は、機器が指定されていることもあります。
Q. 電子マネー決済は必要ですか
現金を持ち歩かない利用者が増えているため、キャッシュレス決済への対応は検討する価値があります。導入には端末費用と決済手数料がかかるため、売上への効果と費用を比べて判断してください。
Q. 収入はどの所得区分になりますか
自ら設備を持って運営する場合は事業所得として扱われるのが一般的です。土地や建物を貸すだけであれば不動産所得になります。判断に迷う場合は税務署や税理士に確認しましょう。
まとめ
コインランドリー投資の利回りは年8〜12%程度が目安とされますが、その数字が土地や建物の費用を含んでいるかどうかで意味は大きく変わります。水道光熱費の比重が大きく、エネルギー価格の影響を受けやすい構造である点も押さえておきたいところです。
判断のポイントは、需要のある立地かどうか、機器更新まで含めた収支が回るか、そして自分がどこまで手をかけられるかの3点です。まずは候補地の周辺にある既存店舗を時間帯を変えて訪れ、稼働の様子を自分の目で確かめてみてください。事業計画や税務の判断については、複数の業者から提案を受けたうえで、税理士などの専門家にも相談しながら進めることをおすすめします。


